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原视频地址:https://natalie.mu/music/pp/tamurayukari09
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田村ゆかりインタビュー「みんなで音楽をやることが、今は楽しくて居心地がいい」
田村ゆかりのニューアルバム「かくれんぼ。」が4月19日にリリースされた。
前作「あいことば。」からおよそ2年、“声出し解禁”となる全国ツアー「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2023 *with me?*」を前にリリースされた今作には、ライブへの期待感を募らせるポップなナンバー12曲が収められている。
田村ゆかりのライブと言えば、一面ピンクのペンライトで埋め尽くされた会場に鳴り響く、ゆかり王国民(田村ゆかりファンの呼称)の一糸乱れぬ盛大なコールも含めてひとつの“作品”と言えるほどに、大歓声が切っても切り離せないものとなっていたが、さまざまな制限のあるコロナ禍にはあの声も封じられていた。そんな中でも初のアコースティックツアーを行うなど積極的にライブ活動を行ってきた田村は、この3年ほどでライブに対する向き合い方、さらには音楽への向き合い方も変わってきたという。今回のインタビューではアルバム全曲のエピソードとともに、ライブに対する思いも語ってくれた。
取材・文 / 臼杵成晃
──アルバムリリースとしては2年ぶりになりますが、その間はけっこうコンスタントにライブを行っていましたよね。2021年は前作「あいことば。」を携えての全国ツアー、昨年はアコースティックツアーとぴあアリーナMMでの2DAYSライブがあり、さらには毎年2月のバースデーライブと。
そうですね。
──アコースティックライブに関しては、2020年のアルバム「Candy tuft」発売時のインタビュー(参照:田村ゆかり「Candy tuft」インタビュー)で……あの時点では伏字で出しましたが、「風の香りと太陽」として神戸チキンジョージでアコースティックライブをやりたいとおっしゃってましたよね。それを発展させて実現に至ったものなのかなと思ったのですが。
はい。もともとアコースティックツアーの会場は風の香りと太陽として押さえていたんですよ。でもそれだと、田村ゆかり本体のライブが2022年はスケジュール上、秋のぴあアリーナMMでのライブしかないとわかったので、本体でアコースティックライブをやったほうがいいかなと。それで急遽、風の香りと太陽にはオープニングアクトになってもらったんです。
──一応補足しておくと、風の香りと太陽は2018年のライブイベント「ゆかりっく Fes '18 in Japan」に登場したフォークシンガーですね。アコースティックライブはいかがでしたか?
アコースティックライブだから、というよりは……コロナの影響を体感する部分が大きかったですね。コロナ禍以前にアコースティックライブをやっていたら、もうちょっとアットホームな感じになっていたと思うんですよ。アコースティックライブに対するお客さんの先入観と、「コロナ禍だから絶対に声を出しちゃいけない、咳ひとつしてはいけない」という変な空気感が混ざっちゃって、少しやりにくさを感じました。
──席に座って静かに観るライブではあるけど、物音も立てちゃいけないような遠慮がちな態度になってしまう。
そうなんです。アコースティックライブ自体は楽しかったし、またやりたいなとは思っていますけど。
──直近のライブである今年2月のバースデーイベントが、田村さんにとってはいわゆる“声出し解禁”のライブになりました。ライブ後の王国民(田村ゆかりファンの呼称)の反応を見てみると、「ひさびさの声出し解禁で意気込んでいたけど、絶妙に盛り上がれない生殺し的なセットリストだった」という声もありました(笑)。
ライブに向けて準備を進めていた段階では、いつから声出しができるかはわからないじゃないですか。なんとなく「もしかしたら声出しOKになるかもだけど……」というくらいで。だからガンガン声出しができるような曲選びはできなかったんです。
──なるほど、言われてみれば確かに判断の難しいところですよね。コール&レスポンスだらけのセットリストにしていたら、肩透かしになってしまうかもしれないし。
でも、そもそも「今までもそんなセットリスト組んでた?」って聞きたいです(笑)。コロナ禍になってみんな勝手に過去を改変してるけど、そうでもなかったよ?っていう。
──(笑)。次のツアーが控えているからそこまでお預けなのかな?という推測も……。
違うよ?と思ってます。
──「王国民の声を上げての一体感」というのがパブリックイメージとして強いですけど、確かにこれまでもライブ全編ブチ上げっぱなしみたいなライブをやっていたわけではないですよね(笑)。
あと、コロナ禍のライブを体験してみて、声が出せるようになったからと言って是が非でも出さなきゃいけないわけではないな、と思うんです。「声出し解禁!」と言うと「みんな叫べー! 騒げー!」みたいに思い込むじゃないですか。そうではなく、私がコロナ禍のライブで嫌だった、MC中に笑いたくなってもちょっと声が漏れただけで肩身が狭い思いをしてしまう、そんな空気感がなくなることのほうがうれしくて。その重しを外すことのほうが重要で、別に「声出し解禁にしたからはしゃげー!」という気持ちもなかったので、盛り上がりばかりを意識したセットリストにはしたくなかったというのもありますね。
──コロナ禍に入って3枚目のフルアルバムというのはなかなかのペースですが、この数年で音楽活動自体へのモチベーションは変わらなかったですか? 今までとは違うこのコロナ禍の活動で、目的を見失ったり、表現に迷ったりしているアーティストも少なからずいると思いますけど。
私は完全に前と同じ世界に戻さなくてもいい、過去を取り戻す必要はないと思っていて。コロナ禍で生まれた「コールの代わりにクラップを合わせる」という楽しみ方もとてもいいなと思っているし、もちろんコールが嫌いになったわけじゃないし。ただ、以前の状態を「正解」にしなくてもいいんじゃないかなと思うんです。アルバムは去年出してもよかったんですけど、アコースティックをやるうえでは新曲はいらないかなーと思って、だったら次のツアーを控えているこのタイミングで出そうと決めました。
──新作「かくれんぼ。」は全12曲で構成されていますが、全体の印象としてはすごくブライトで、この何年かの作品の中でもとりわけ明るくポップなムードを感じました。
そうかもしれないですね。全体が明るくなったのは、途中でバランスを見て明るい曲を足したらそうなっちゃったんですけど(笑)。気持ち的に何か大きく変わったわけではないです。ライブを意識した部分はあるかもしれませんけど、今はこんな感じかな?っていう。
──大上段に「今回のアルバムコンセプトは」とか「こういう新規軸を打ち出して」というのは……。
あー、そういったものはないですね。「なんか今、歌いたい曲」みたいな感じです。それは私が歌を始めてから今までずっと同じなので、いつも通りですね。
──ポップな曲が多いのもあり、リード曲の候補になりそうな曲がいくつもあると感じました。
そうですね。ホントに選ぶのが難しかったですけど、ちょっと悩んで「Bejewel Escape」にしました。この曲は松井五郎さんに歌詞をお願いする段階で「ツアーを意識してほしい」とお話した曲なので、ツアーの前に出すアルバムのリード曲としてはこれかなって。
──ここからは順を追って1曲ずつお聞きします。前作が初参加ながらアルバムの軸を担うような活躍を見せたサクマリョウさんが、今作にも4曲で参加しているのは注目ポイントの1つかなと思いますが、そのサクマさんの楽曲「Fanfare」がアルバムのオープニングを飾っています。
この曲についてはこちらから「こういう曲が欲しいです」というオーダーを出しました。具体的に言うと、シンガロングできる曲。アルバム制作の最初の段階でできた曲なんですけど、リョウさんから上がってきたデモを聴いてみたら「これもう、1曲目じゃん!」と思っちゃって(笑)。ほかの曲も何もそろってなかったのに。最後まで不動の1曲目でした。
──ほんのり切なさもありつつさわやかな四つ打ちのハウスサウンドで、「やあ、また会えたね」というフレーズが印象に残ります。田村さんは常々アルバムの1曲目を大事にしていると話していますよね。1曲目に必要な要素というのはどういうものなのでしょう?
そのとき集まっている曲によりますけど……1曲目というのはお客さんが一番ワクワクしているときに聴く曲だと思うんですよ。CDの場合ですけど。
──買ってきて、封を開けて、プレイヤーにセットして、最初に耳に飛び込んでくる音ですからね。
そのワクワク感に応えられる曲。それが条件ですね。
──そんな重要な“1曲目”のパーツがアルバム制作の初期段階でそろっていたというのは、順調な滑り出しですね。
いや、そうでもなかったです(笑)。でも全体像が見えて曲順を並べてみたときに、やっぱりこの曲が最初に入ることで「いいアルバムになったな」って思いましたね。
──2曲目の「Everlasting Voice」は音にほどよく隙間のある聴き心地のいいギターロックで、すごくシングル的というか、リード候補になっていそうだなと思いました。
実はけっこう前にプリプロまで進めていた曲で。「あいことば。」のときにも候補に挙がっていたんですけど、別の曲と少しテイストがかぶっちゃうかなと思って残しておいたんです。なんですかね……ロック、って感じですよね。
──(笑)。
本来は私、ロックはそんなに好きじゃないんですよ。ただ、この曲はとてもいいなと思って温めていました。
──作詞はおなじみ松井五郎さんで、松井さんは「Everlasting Voice」を含めて6曲、アルバム収録曲の半分の作詞をしています。松井さんには事前に「こういうアルバムにしたいから、こういう歌詞を」というオーダーをしたんですか?
アルバムを通してのイメージというのはないですけど、歌詞は1曲ずつ細かくオーダーしていますね。「Everlasting Voice」もライブを意識した曲ですが、これは客席側にいるお客さんの目線です。自分が参加したライブのことを思って、そのときの気持ちが自分のお客さんにも重なる部分があるんじゃないかと思って書いてもらいました。
──3曲目の「くちびるプラトニック」も作詞は同じく松井さんで、作編曲は奥田もといさん。ニーズオブファンとも言えそうな、極めてポップなラブソングですね。
そうですね、この曲はまさにニーズで入れました。ニーズです。
──(笑)。ザ・田村ゆかり像みたいな。
「みんなこういうの好きでしょ?」と思って入れました。ちょっと迷いましたけど(笑)。もちろんアルバムに嫌いな曲なんて入れないし、自分が好きで歌いたいから選んでいるんですけどね。
──これだけポップということは、先ほどおっしゃっていた……。
バランスですね。でも入れてよかったと思いました。アルバムを作り始めて8曲くらいできた段階で「明るい曲、少なっ」と思ったんです。なくはないけど、ちょっとこれお客さんは困惑するかもなって思っちゃって。そこから「明るい曲、集合!」みたいな感じでデモテープを昔のものから聴き返して……この曲が一番「パブリック田村ゆかり」かなと。
──もちろんただただ明るいだけではなくて。「勝手に悪い想像でディープな夜にいたくない さみしさがシニカルな夢になる」という歌詞などは田村さんと松井さんのコンビらしいリリカルな表現だなと思いました。
メロやアレンジが明るくても切なさはしっかりと入れたい、と思って歌詞はいつもお願いしているので、100%明るいだけの曲には基本ならないですね。リスナーとして聴くのは大好きだけど、自分の作品としては選ばないかもしれない。
──4曲目の「QT Two-Face」はちょっとスウィングジャズを挟んだりする軽快な80'sアイドル風のポップソングで、少し神楽坂ゆか(田村によく似た架空の昭和アイドル)を彷彿とさせるムードも感じました。
ホントですか? そこは意識してなかったです。
──おそらくシティポップのような雰囲気があるからだと思いますけど。作編曲は園田健太郎さんで、園田さんはこの曲とリード曲「Bejewel Escape」の2曲を提供しています。
園田さんの曲は心地いいんですよね。園田さんのデモテープはどれもよくて。ただ、アルバムの中に要素がかぶっちゃう曲は入れられないので「ちょっと君は待機していて」みたいな曲がいっぱいあるんです。園田さんにもそれは伝えてるんですけど。「あれも好きだしこれも好きだしこれも好きなんだけど……ちょっと待ってもらってます」って(笑)。今回はアルバム全体の中でこの曲がいいかな、と思って2曲選ばせてもらいました。
──ここまでの4曲は、バリエーションは違えどどれも明るくポップで。5曲目からは、少しトーンを抑えた、大人っぽい曲が続きます。「Sunny Spot」はミドルテンポでグルーヴィな、今ドキ感のあるサウンドですね。
まさに今ドキ感のあるアーティストさんを例に挙げて「こういう感じの曲が歌ってみたいんです」とディレクターにお願いしました。これもちょっとシティポップっぽさがありますよね。
──確かに。田村さんのアルバム中盤というと、もっとディープな、重たいムードのバラードが置かれることが比較的多かった印象ですけど、このアルバムはトーンを落としつつ重さはない、しっとりとした中盤戦になっていて。それがアルバム全体の明るいムードにつながっているのかなと。
そうですね。いわゆる“どバラード”はこのアルバムだと奥華子さんに書いていただいた曲くらいで。怨念みたいな曲が1つもないんですよ、実は。
──怨念(笑)。そうなんですよね。
今回は怨念なくてもいいかなーと思っちゃって(笑)。
──「Sunny Spot」と次の「Moonhole」はどちらもサクマさんの作編曲で、流れとしても連なりを感じます。サクマさんはまさにこのアルバムの中核を担っている作家と言えますね。
そうなんですよねー。リョウさんは本当に、なんでも書いてくれるんですよ。「こういう曲が欲しいな」と思ったときは、コンペでお願いするためにいろんな要素をコンペシートに書き出していくんですけど、「これ、リョウさんに頼んだらいい感じで作ってくれそうじゃない?」って、結局リョウさんに決め打ちで書いてもらうことが増えてきて。で、やっぱりこちらが思っている以上のものが返ってくるんです。このへんの曲が自分では今一番歌いたい感じなんですけど、「明るい」「暗い」「悲しい」みたいなハッキリしたものじゃないから、お客さんのニーズには合ってないかも?という心配もあって。それでさっき言った「帳尻合わせ」が必要かな、と思ったんです。
──そして7曲目の「忘れな月」がこのアルバムのディープな部分を一手に担っている、奥華子さん書き下ろしの“どバラード”です。
これも過去のバラードに比べたら怨念はないかなーと自分では思っているんですよ。呪い要素は少ないなと。
──奥さんの楽曲提供は「Candy tuft」収録曲「嘘」以来です。前回は奥さんの楽曲「恋」に通じる暗く悲しい曲を、という内容の概要書を旅先のアラモアナショッピングセンターから送ったとおっしゃっていましたが(笑)、今回はどういうオーダーを?
今回は私は概要書を作っていないんですよ。奥さんの曲を挙げて「こういうテイストで、悲しい曲が欲しいです」とだけ。
──奥華子のバラードのファンとして、「忘れな月」はいかがでしたか?
もうド真ん中きたなと。暗いなーとは思うんですけど、やっぱり好きなんですよね。こういう曲が。
──続いて8曲目は、RAM RIDERさんによる四つ打ちハウスの「ぜんぶきみのせい。」です。RAMさんについては、最初の頃は「グイグイくる」「意思の疎通が難しい」とおっしゃってましたけど(笑)、すっかり田村作品のレギュラーメンバーですね。
一応言っておきますけど、私、もうRAM RIDERさんのこと好きですよ。「もう」って言っちゃったけど(笑)。わりと仲よくやってますよ? これは「明るい曲が少ないから、RAMちゃん明るい曲ちょっと書いてよ」とお願いしました。あとは「何をやるべきか迷ってるんだけど、今流行ってる曲ってどんなの?」って相談したりして。
──わりとフリーテーマなオーダーだったんですね。
明るい曲ってお願いしたのに、そうでもないじゃん!と思いましたけど(笑)。ただ、私がRAM RIDERさんに求めているものは「パブリックゆかりんのド真ん中」じゃないから。むしろRAM RIDERさんの得意なものや個性が出ているほうがいいと思ってるし、「ぜんぶきみのせい。」は歌詞も含めてすごく好きだったので、「明るくはないけど、いい曲なんでこれでいきましょう」って。ふふふ。パブリックゆかりん的なかわいらしさはRAM RIDERさんからは出てこないんですけど、RAMさんが田村ゆかりを思ったときに出てくる歌詞や音楽は、方向性は違えど、やっぱりかわいいんですよ。
──9曲目の「ブルジェオンの薔薇」もシングル的なキャッチーさがある曲で、ストリングスの流麗さなどはアニソン的でもありますね。
これは本当にシングル的な、お客さんがわかりやすく盛り上がれる曲が欲しくて。ただ、歌詞のオーダーがわりとネガティブになっちゃって。私は幸せなときに、それをなくしてしまうのが怖くてネガティブなことを思ってしまうから、その気持ちをポジティブに変換してほしいと。
──ブルジェオンはフランス語で「蕾」ですが、こういったキーワードは田村さんのほうから?
いえ、これは松井さんが私のオーダーを読み解いてイメージしてくれたものですね。
──いわゆる典型的な“アゲ曲”ではなく、アレンジの黄金進行的な様式美だとか、構築された世界に没頭することで気持ちが高まっていく感覚はアニソン的とも言えますね。
そうですね。お客さんがわかりやすい、なじみのいい曲になったと思います。
──そして園田さん作編曲のリード曲「Bejewel Escape」はすごく爽快感のあるナンバーで、アルバム後半にきてさらに全体のポップな印象を底上げしているように感じます。これは先ほどのお話ですと、ライブをイメージした曲だと。
はい。ツアーに向けての気持ちを盛り上げてほしい気持ちがあったので、あなたと一緒に旅に出かけましょう、という歌にしたくて。
──なるほど。
アルバムの曲はやっぱり発売されたときに聴いてほしいと私は考えているので、その中でも先に耳にする機会があるリード曲を選ぶとしたらどの曲だろうな……と考えたら、ライブに向けての気持ちを高めるこの曲がいいかなと思って「Bejewel Escape」を選びました。
【23/4/19发售】田村ゆかり 新专 「かくれんぼ。」主打歌曲「Bejewel Escape」MV
──11曲目の「わすれもの」はサクマさんの作編曲ですが、こちらは中盤ではなくアルバムのクライマックスに配置されています。この曲は歌詞の韻の踏み方が気持ちいいなと思いました。
そうですね。作詞の川島亮祐さんはリョウさんと一緒にバンドをやってらっしゃって、私の曲ではお二人がタッグのパターンが多いんですけど、リョウさんのメロも、亮祐さんの言葉も大好きなんですよ。穏やかで幸せなイメージがあったので、アルバムの終盤に置いてみました。
──そして「うらはら兎のねがいごと」はさわやかな余韻を残すエンドロールのような印象でした。これでアルバムが明るく締めくくられて、いい気分でついそのままリピートしてしまうような。
そうです、そうです。まさにリピートしやすいようにしました(笑)。この曲は確か、2017年くらいにいただいていたデモテープの中から引っ張り出してきたんですよ。
──2017年の段階では、田村さんにとっては明るすぎた?
いえ、そのときにもプリプロをさせていただいてたんですけど、たぶん曲数的な問題だったと思います。この音が上下に跳ねている感じとか、穏やかで明るい感じが今の気分にはちょうどよくて。
──全12曲、ほどよくライトにも楽しめる、まとまり感のあるアルバムだなと思いました。
ホントですか? よかったです。ホントに途中までは「辛気臭いアルバムになりそうだな」と思っていたので(笑)。
──今日の話を聞いてもなお辛気臭いと感じる要素は全然ないですけどね。
「辛気臭い」という言葉の選び方が間違ってるかもしれませんけど(笑)……なんだろうな、お客さんにとってのわかりやすい曲がないなーという印象が作っている途中はずっとあったんですよね。結果、自分でも大好きな曲ばかりですし、仕上がりにも満足しています。
──ちなみにアルバムタイトルはなぜ「かくれんぼ。」に?
前作を「あいことば。」というタイトルにしたら……オタクの人は基本、長いタイトルが好きじゃないですか。「なんとかかんとかのなんとかの花」みたいな。でも「あいことば。」はすごく好評で。なんでかなって考えると、「あいことば。」って独り言じゃないんですよね。私からの言葉だけど、あなたも共有することができるという相互性がある。今回もそういうタイトルがいいなと思って。かくれんぼも1人じゃできないですよね。
──必ず1人以上の相手が介在する遊びですね。
それで付けたタイトルなんです。どういう意味なのかは皆さん勝手に考察すると思いますけど(笑)。
──ツアーを控えている中で「楽しく歌える曲がまた増えた」という感じがあるのでは?
そうですね。もちろんツアーのセットリストにもガンガン入れていますし。ただ、「Candy tuft」と「あいことば。」の曲は当然コロナ禍でしかライブで歌っていなくて、お客さんが声を出せる状態で歌ってみたい曲もたくさんあるので……セットリストを組むのはけっこう難しいですね。
──あれもこれもと考えていたら、曲数がすごいことになりそうですよね。
そうなんですよ! 意外とやれる曲が限られてきちゃうな、どうしよう……と思っちゃって。
──もちろんコール&レスポンスやシンガロングができる曲もあるでしょうし、そういう曲ばかりでもないでしょうし。とはいえ、やっぱり王国民は「声を出すぞ!」という気持ちでいるのではないでしょうか。
そうは言っても、でも君たちもお年を召してきてますよね?って思うんですよね。この間のバースデーライブのときには、みんなひさしぶりに飛び跳ねて声を出していて、結果「あれ? 俺、こんなに体力なかったっけ……」って感想を見かけたので(笑)。こっちはそんなに激しくやる想定じゃないセットリストだったのに、もうへばってるじゃん!って思っちゃって。思い出を追い求め続けるだけじゃなくて、もうちょっと気楽にいこうよと言いたいです。
──声出せるっちゃあ出せるので、まあ適度にと。
声出し解禁になったからっていつでもどこでも奇声を発していいわけではないし。ちょっと笑い声を出しただけで隣の人に睨まれちゃうとか、それがなくなっただけでもいいじゃんって。もちろん盛り上げてほしいという気持ちもあるので「声を出すな」と言ってるわけじゃないんですけど。
──しかし今回のツアー、けっこうな本数ですよね。4月に始まって9月まで、計28公演が予定されています。
そうですね。多くなっちゃいました。ライブ制作会社の方は候補としてこの日程を挙げていただけで、それをほぼほぼ全部やるとは思ってなかったんじゃないかな(笑)。でも、候補で挙がっている会場を見てたらやりたくなるじゃないですか。「ここ空いてたよ」って言われたら。「あっ、じゃあやります」って答えてたらこの本数になりました(笑)。「なんだったらここ間が空いてるから埋めてくださいよ」とか言って。
──アルバムをコンスタントに出して、ライブもこんなにやって……すごく音楽活動に対して精力的ですよね。
なんだかわからないですけど……やりたいんでしょうね、今。
──作品を出してツアーを回って、というアーティストのルーティンを、これからも続けていくのかしらと。
それはまだわからないですけど。ただまあ、たぶん……自分のことなのになんだ「たぶん」って(笑)。あの、作品を作って、みんなで音楽をやるということが、今は楽しくて居心地がいいんだと思います。イヤイヤやってるんじゃなく、やりたくてやってる感じが自分の中にすごくあって。
──少し前まではそんなことなかったですよね? もっと消極的な発言が多かったように思います。
このコロナ禍で、肩の力が逆に抜けたのかな?って気がしますね。今までの「ゆかりんのライブはコールがあってどうこう」みたいなところから「そうじゃなくてもいいじゃん」と思えるようになったことも大きいかもしれない。
──それを求められるし、それをやる、みたいなところからちょっと抜け出せたと。
もちろん突き放すわけじゃないし、そういう曲も「このへんで盛り上がりたいだろうな」というところでセットリストの要所要所に入れてますけど、なんだろうな、自然体で楽しくやれていますね。だから次もやりたくなるっていう。……言葉にしてみるとすごくポジティブな感じになりますけど、日常的にそうかと言われるとそうでもないし、そんなに変化があったとは自分では思わないですけど。ダンスリハとか絶対にやりたくないし。
──(笑)。
振付のリハはイヤですよ。本番で歌うのはいいけど、踊るのとかはヤだ(笑)。
──そのアンビバレントはどうにかならないんですか(笑)。100%楽しいー!みたいな状態にはならないんでしょうか。
だって踊りとか苦手なんだもん。運動神経悪すぎるから。お客さんは視覚的にも楽しみたいだろうから、踊れないなりに動かないと、と思ってやってますけど……だって私、ダンスの先生に「ゆかりさんが何かをやってカッコいいことなんか1コもないんだから」って言われてるんですよ(笑)。「カッコいいことなんて1コもないから大丈夫だよ!」って、そのなぐさめ方は何?っていう。
──(笑)。世間的にダンスへの理解が深まっているから、見られる側のハードルも高くなりそうですよね。
私のは、おぼつかない足取りの人が動いている「守ってあげたい!」のやつなんで。庇護欲のやつなんで大丈夫です(笑)。昔は私、ライブよりもレコーディングのほうが好きだったんですよ。でも今は、お客さんが目の前にいて歌っているほうが楽しいなと思いますね。もしかしたら「下手くそでもいいや」と思えるようになったのかもしれない。多少音が外れちゃってもいっかなー、と思って飛びながら歌っちゃったりすることが最近は多くて。よくないことかもしれないけど、それを自分の中で許容できるようになったのが、楽しくなった1つの要素かもしれないですね。
2023年4月22日(土)埼玉県 川口総合文化センターリリア
2023年4月23日(日)栃木県 栃木県総合文化センター メインホール
2023年4月29日(土・祝)広島県 広島文化学園HBGホール
2023年4月30日(日)大阪府 グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)
2023年5月5日(金・祝)新潟県 新潟テルサ
2023年5月7日(日)神奈川県 神奈川県民ホール
2023年5月28日(日)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
2023年6月3日(土)岡山県 倉敷市民会館
2023年6月4日(日)京都府 ロームシアター京都 メインホール
2023年6月10日(土)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
2023年6月17日(土)茨城県 ザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター)大ホール
2023年6月18日(日)東京都 J:COMホール八王子
2023年6月24日(土)石川県 北陸電力会館 本多の森ホール
2023年6月25日(日)長野県 ホクト文化ホール 大ホール
2023年7月1日(土)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2023年7月2日(日)三重県 四日市市文化会館 第1ホール
2023年7月8日(土)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
2023年7月9日(日)神奈川県 横須賀芸術劇場 よこすか劇場
2023年7月17日(月・祝)群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
2023年7月22日(土)北海道カナモトホール(札幌市民ホール)
2023年8月5日(土)岩手県 盛岡市民文化ホール 大ホール
2023年8月6日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
2023年8月11日(金・祝)静岡県 富士市文化会館ロゼシアター
2023年8月13日(日)奈良県 なら100年会館 大ホール
2023年8月19日(土)福岡県 福岡サンパレス
2023年8月20日(日)大阪府 グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)
2023年9月2日(土)東京都 東京ガーデンシアター
2023年9月3日(日)東京都 東京ガーデンシアター
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